演者逃亡につき、
ヤマがなければオチもないなんて怒られてるけれど、当たり前じゃない。私と彼の愛の逃避行を、こんなむさ苦しいおじさんに読まれてたまるもんですか。
それに、それによ?
この後、どこの馬の骨とも分からない連中にまでばらまかれちゃうんでしょう? そんなのされたら逃げてる意味がないじゃない。
だから私たち、もっと逃げるのよ。逃げて逃げて逃げて、逃げた先で彼と二人でゆっくり暮らそうって約束してる。知ってるでしょう? 貴方たちったら、盗み聞きしてたんだもの。
彼が呼んでる。もう行かなくちゃ。私たち、ここでお別れよ。また出会えたら、その時は私たちの新婚生活を書かせてあげてもいいかもね。もっとも、私たちの居場所を見つけられたらの話だけど!
それじゃあ皆さんさようなら。
精々お元気で。
「どうしたんですか、羽山先生。これじゃあただのレシピ集ですよ……前回の逃亡劇から一転しすぎて、読者は付いてこれませんって……」
「私にだって分かりませんよ。急に、急に書けなくなっちゃって……」