惰性で神様になる話
年に一度の村の取り決めで、今回の神様は弟のカズキになってしまった。
カズキはくじ引きの結果が出た瞬間から「やだよお~」と情けなく頭を抱えて喚いていて、みんな神様になるのは嫌なので、特にそれを注意することもなく放ったらかしている。だからしばらくの間、集会所内にはカズキの奏でる「やだな~」という声が響いていた。
誰が神様になるかどうかはくじ引きで決める。今回のくじ引きを作る当番は裏の家に住んでいる村上さんで、毎朝顔を合わせる度に「代わってくんない?」と言っていた。代わらない。
村の人口は少ないとは言え、全員分のくじを作るのは面倒臭そうなので、神様になるのと同じくらいくじ引き当番になるのも嫌だ。
いよいよお祭りが始まって、「いやだな〜」という顔をしたカズキが櫓の上でボーッとしている。ゆっくりと空が白んでいくと、徐に銀色にビカビカ光るアダムスキー型の円盤が三つ現れた。村の外れに着陸して、中からグレイタイプの宇宙人が、村の人口と同じくらい現れる。
そもそも宇宙人と交信する神様ってなんなんだろうという話なんだけれど、ずっと続けてきた風習を今更やめるのもなんだか怖いし、ずるずる続いている。それは向こうも同じなようで、宇宙人達も眠たい眼でぼーっと村の爺ちゃん連中の豊作祈願の踊りを見守っている(時々居眠りをしながら)。
そういう訳で今回も、村の牛三頭がアブダクションされていってお祭りは無事に終わった。宇宙人達が段取りを間違えて、カズキをアブダクションしようとしたのはちょっとビビったけど。当の本人はというと泣き喚いていたのもどこ吹く風と、櫓の上からこちらにピースサインを向けながら「ちょっと浮いた」と誇らしげに笑っている。