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 人工血液を焼酎で割ってみるのはどうでしょう。
 グラスの水滴を拭き上げながら、アルバイトは不意に呟く。どうでしょうって。また突拍子も無いことを言い出して。君は思いついたことがすぐ口から出るなあ。
 
「あざっす」とプリン頭がゆらゆら揺れる。会釈のつもりか。
「別に褒めてないんだけど……ていうか、人工血液と焼酎って合うの?」
「いや分かんないです。分かんないですけど、多分、合いますよ。あれって基本的に何にでも合うんで」
 そういうもんなの? そういうもんです。
 フーンと相槌を打つ。
 
「……まあ、オリジナルメニューの開発もいいけど、ちゃんと他の仕事もやってね。はい、ゴミ捨ていってらっしゃい」
 はあいと間延びした返事。
「人工血液の件、考えておくからさ」
 そう言いながらゴミ袋を手渡す。
 試飲なら任せてくださいね! と無邪気に八重歯を光らせながら、ゴミ袋と共に店の外へと消えていく。単純だなあとその背中を見送った。