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 人工血液と私の血、どっちの方が好き?


 嫌な二択だなあ。
 仕事と私ならいざ知らず、こういう時ってなんて答えればいいんだか。残念なことに、いくら不満を募らせたところで抗議の声を上げることすらままならない。口の中に突っ込まれた恋人の人差し指からは、鉄の味がする。

 答えあぐねて彷徨わせていた視線を恋人の方に向け直すと、ばちりと目が合った。試しに抗議の意思を視線で訴えかけてみたが、全く響かなかったようだ。顔色ひとつ変えず、ケロリとしている。

 人差し指は八重歯の裏をゆっくり撫ぜる。
 指先からの出血は、とうの昔に止まっている。