内緒の話


 安田は色んなことを知っていて、私が知っていることも私が知らないこともよく知っている。
 安田は時折ふわふわとあちらこちらを漂っては居なくなることがあって、多分おそらく、その時に色んな知識を仕入れてくるんだろうと思う。
 だけれども、例えではなく本当に透き通った指は何を成すことも出来なくて、新たに仕入れた知識も所詮は誰かの言葉を借りただけに過ぎない嘘っぱちだ。
 これからもこの先も、安田は自分の経験として語ることは出来ない。
 
 私はそれに、ほんの少しの憐れみと、それでいて確かな優越感を抱いていて、この気持ちはこれから先もずっと、胸に秘めたままとする。